赤ちゃんは、生後5,6ヶ月になると乳汁だけでは、エネルギーやたんぱく質、鉄などの栄養素が不足するようになります。
このため、乳汁以外の食べ物から栄養素を摂取することが必要です。
またこの時期の栄養が成人になってからの様々な疾患に関連するとの報告もあるので、とても大切な時期となるでしょう。
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離乳の進め方
5,6ヶ月頃
赤ちゃんの様子をみながら、1日1回1さじずつ始めましょう。
なめらかにすりつぶした状態のものを「ゴックン」と飲み込むこと、食べものの舌ざわりや味に慣れることの学習です。
あせらずゆっくりと進めていくことも大切です。
つぶしがゆから始め、すりつぶした野菜、慣れてきたら、つぶした豆腐や白身魚など少しずつ量や種類を増やしていきましょう。
この時期は調味料による味つけはまだしなくてOK。
母乳または育児用ミルクは、赤ちゃんが欲するままに与えてください。
7,8ヶ月頃
離乳食を開始して1ヶ月を過ぎたころから食事の回数は2回食に進め、食事のリズムをつけていきましょう。
舌でつぶせるくらいに、やわらかく煮た物を「モグモグ」口を動かして食べる練習を行います。
おかゆはつぶさず、10倍がゆから7倍、5倍(全がゆ)へと少しずつ水分量を減らしていきます。
野菜、豆腐、白身魚、脂肪の少ない鶏肉など食品の種類も増やしていきましょう。
卵は固ゆでにした卵黄を少量から与えていきます。
1回の食事に穀類、野菜、たんぱく質性食品を組み合わせた内容のものとしてください。
料理の味付けはだし汁を活用し、ごく薄味にしましょう。
また、料理にとろみをつけると食べやすくなります。
離乳食を与えた後に母乳又は育児用ミルクを与えます。
離乳食とは別に母乳は赤ちゃんの欲するままに、育児用ミルクは1日3回程度飲ませてください。
9~10ヶ月頃
食事のリズムを大切に、1日3回食に進め、歯茎でつぶせる程度の固さのものを「カミカミ」して食べる練習を行います。
多くの食品を使用し、料理にも変化をつけてあげましょう。
鉄が不足しやすくなるので、鉄を多く含むレバー、肉、赤身の魚などを十分に与えましょう。
大人の食事からの取り分けもできる時期となりますが、薄味に仕上げることが鉄則です。
汁ものをコップや汁椀から飲む練習も始めましょう。
このころから、家族一緒の食卓も楽しめるようになります。
食欲に応じて、離乳食の量を増やし、離乳食の後に母乳または育児用ミルクを与えてください。
育児用ミルクは、フォローアップミルクへと切り替えていきましょう。
離乳食とは別に母乳は赤ちゃんの欲するままに与え、育児用ミルクは、1日2回程度与えてください。
12~18ヶ月頃
食事の回数は3回の食事と間食(おやつ)を与え、食事から十分な栄養が摂れるようになります。
料理は、歯茎でかめる固さのもので、幼児食に近づけていきます。
ミルクを哺乳瓶で飲むことから、コップで牛乳を飲むことに切り替えていきましょう。
自分で食べる楽しみを手づかみ食べから始めます。
「手づかみ食べ」とは、食べものを目で確かめ、手指で感触をつかんで口まで運び、前歯を使って自分なりの一口量をかみとり、奥の歯茎でかみつぶすという「目と手と口の協調運動」です。
摂食機能の上でも重要な役割を担います。
一口大やスティック状にした食べもので十分練習させてあげましょう。
手づかみ食べが上手になり、自分で食べようとする意欲が見られたら、スプーンを持たせ、スプーンですくいやすい安定した食器を使用します。
そして食べものをスプーンに乗せやすい大きさに切って盛り付けてあげましょう。
盛り付けや色彩も考慮して食べる楽しさの体験を増やしていきます。
子どもの気持ちを大切にすることにより、自分で食べる意欲も育っていくでしょう。
離乳の完了
形のある食べものをかみつぶすことができ、栄養の大部分を母乳、ミルク以外の食べものからとれると離乳は完了となります。
「離乳の完了」とは、母乳やミルクを飲んでいない状態のことではありません。
母乳やミルクは子どもの離乳の進行および完了に応じて与えましょう。
赤ちゃんの成長の目安

出展:平成 22 年乳幼児身体発育調査報告書(概要) 資料1 – 厚生労働省
離乳食の食事量の評価は、成長の過程で評価していきます。
成長曲線グラフ(下図)に身長や体重を明記し、成長曲線のカーブに沿っているかどうかを確認しましょう。
発育には個人差があり、一人ひとり特有のパターンを描きながら大きくなりますが、身長や体重の変化を見ることにより、成長の経過を確認することができます。
体重増加が見られず、成長曲線からずれていく場合、または成長曲線から大きくずれるような急激な体重増加がある場合は、医師に相談し、その後の変化をみて適切に対応する必要があります。
離乳の留意点
鉄不足
離乳期の栄養補給においては、鉄不足があげられます。
母乳には鉄が非常に少なく、赤ちゃんの貯蔵鉄で補われていますが、5,6ヶ月にはなくなっていくため、離乳食で摂取していかなければいけません。
しかし赤ちゃんが鉄を摂取するのはまだ難しいといえます。
今日では、牛乳を満 1歳になるまで与えませんが、それは鉄が少なく、牛乳に含まれるリン・カルシウムが鉄の吸収を低下させるなどの理由があるからです。
極度な鉄分の不足が 3ヶ月以上も続くと精神運動発達(人見知り・バイバイ・つかまり立ちなど)の遅れの可能性が出てきます。
貧血に至らない程度の鉄不足でも神経伝達物質の生成に障害や脳細胞の機能低下があるとされています。
赤ちゃんの栄養と肥満、生活習慣病との関わり
胎児期や乳幼児期の栄養が、年を経て成人になってからの肥満、2型糖尿病、高血圧などと関連があるとの報告が近年増加してきています。
また乳幼児に育まれた味覚や食事の嗜好は、その後の食習慣にも影響を与えています。
そのため、この時期の食生活や栄養の問題は生涯を通して健康、肥満などの生活習慣の予防につながる、という長期的な視点からも考える必要があるでしょう。
海外の研究データでは、乳児期の過体重はその後の肥満につながりやすいこと、完全母乳栄養は成人期の肥満リスクを下げること、乳児期の急激な体重増加が成人期の肥満につながりやすいことが示唆されています。
食物アレルギー
離乳期のアレルギーの予防効果としては、生後4ヶ月までに多種類の固形物を摂取しない方が湿疹や喘息の出現頻度が少ないという報告があります。
一方で、卵や牛乳の開始を遅らせた群では、5歳半の湿疹リスクが高くなるという報告もあります。
亜鉛欠乏
亜鉛は身体の成長に必要なたんぱく質をつくるために必要不可欠で、不足すると皮膚炎や貧血、発育不全、免疫機能の低下などが起こります。
鉄と同様、特に低出生体重児で不足するリスクが高くなり、亜鉛欠乏で現れる皮膚炎や発育不全、貧血などの症状に注意しましょう。
亜鉛は卵黄や牛の赤身肉をはじめとする動物性食品に多く含まれ、授乳中のママは積極的に摂るようにしてください。
また卵は比較的早くから乳児に与えることができるので、アレルギーがなければ離乳食に摂り入れましょう。
ビタミンD不足
母乳はビタミンD濃度が低いので、乳児に骨の変形などが起きる「くる病」が発生する懸念があります。
くる病の予防は、妊娠中も授乳中も1日30分程度、日光に当たること、乳児にも日光浴の機会を作ることが大切です。
ビタミンDは魚やきのこ類に多く含まれるため、離乳食で摂り入れるようにしましょう。
また一定のビタミンDが配合されている粉ミルクの場合、母乳に比べて不足しにくいでしょう。