成長期の各期における適切な栄養摂取内容については以下の通りです。
どのような過程で、1日に摂るべき数値が出ているのかもあわせて説明していますが、各栄養成分の表の部分が重要なので、お子さんの食事内容の栄養価が気になる場合はぜひ、ご参照ください。

エネルギー

成長期は、身体活動に必要なエネルギーに加えて、成長に必要な組織増加分に相当するエネルギー蓄積量とその組織の形成にエネルギーが必要になります。
組織の形成に必要なエネルギーは総エネルギー消費量に含まれ、1日に必要とされるエネルギー量は次のような計算で表されます。

推定エネルギー必要量(kcal/日)
=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル+エネルギー蓄積量(kcal/日)

体重1kg当たりの基礎代謝量や基準値は同一の性、年齢であった場合、ほぼ一定の値になります。
1日の基礎代謝量は基礎代謝基準値に基準体重を乗じて算出されます。
幼児は身体活動レベル([表①]参照)に必要なエネルギーに加えて、成長に伴う体重増加を考慮し、エネルギー蓄積量を追加して摂取しなければいけません。

身体活動レベル(PAL)は各年齢によって異なり、年齢と共に増加します。
エネルギー蓄積量は参照体重から1日当たりの体重増加量を算出し、これと組織の増加分のエネルギー密度との積で表されます。

[表①]成長期の身体活動レベルの群分け(男女共通)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

[表②]成長期の体重増加量とエネルギー蓄積量
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

[表③]成長期の推定エネルギー必要量(kcal/日)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

たんぱく質

たんぱく質は、骨格筋や酵素など体組成に不可欠なものです。
各年齢時期に必要とされる1日のたんぱく質量は下表を参照にしてください。

たんぱく質(成長期の推定平均必要量、推奨量:g/日、目標量
(中央値):%エネルギー)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

脂質

脂質の生理機能は

  1. 生体膜の主要な構成成分やエネルギー蓄積物質となる
  2. 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)やカロテノイドの吸収を促進する
  3. ステロイドホルモンやビタミンDの前駆体となる

などがあげられます。

脂質の食事摂取基準は、炭水化物やたんぱく質の摂取量を考慮して設定する必要があります。
そのため目標量を総エネルギー摂取量に占める割合(エネルギー比率:%E)で示されているのです。
エネルギー比率のうち脂肪エネルギー比率(%E)の目標量(中央値)は20~30(25)です。
目安量は1歳以上からは設定されていません。
皮膚炎などの欠乏症を考慮し、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の目安量は示されていますが、17歳以下の飽和脂肪酸の食事摂取基準は設定されていません。

脂質(成長期)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

ビタミンA

ビタミンAは上皮、器官、臓器の成長、視機能に関与します。
思春期では視力低下の傾向があるため、食事摂取基準の量を十分摂取する必要があります。
1日の必要量および、推奨量などは下表のとおりです。

ビタミンA(㎍RAE/日)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

幼児におけるビタミンAの推定平均必要量

推定に用いることのできる幼児のデータは報告されないため、成人の値に外挿して、求められています。
ビタミンAは脂溶性のため、幼児が過剰摂取した場合、肝臓に蓄積されます。
そのため摂取量が不足しても、肝臓内貯蔵量が一定量に低下するまで欠乏症は見られません。

ビタミンB1、B2、ナイアシン

ビタミンB群のうち、この3点はエネルギー代謝に関与しているので、成人の推定平均必要量は、エネルギー摂取量あたりのビタミン摂取量と尿中への排泄量の出納から算定さています。
また、それぞれの値を参照値として対象年齢区分の推定エネルギー必要量(身体活動レベルⅡ[表①]参照)を乗じて算出されています。

ビタミンB1、B2、ナイアシン
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

ビタミンC

心臓血管系の疾病予防に、血漿ビタミンC濃度が50μmol/L程度であれば期待できるので、この濃度を維持する成人の摂取量が推定平均必要量とされました。

成長期では、成人の推定平均必要量を対象年齢区分の体表面積比較を示す式と、成長因子を用い、外挿して推定平均必要量が算出されています。
この値に個人間変動係数の2倍(20%)を加算して推奨量が求められます。

ビタミンC(mg/日)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

ビタミンD

カルシウムが正常に利用され、血中副甲状腺ホルモン濃度が上昇しない程度のビタミンD量が必要です。
正しくは「血中25-ヒドロキシビタミンD濃度」といいますが、この濃度を保持できる摂取量の中央値が目安量とされています。

ビタミンDの摂取は小児のくる病、成人では骨軟化症の発症リスクの低減にもつながります。
また9~17歳では腎臓での活性型ビタミンDの産生能力が増大します。
そのためにもビタミンDの摂取は重要なのです。

ビタミンD(㎍/日)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

ビタミンE

成人の摂取量と血中のα-トコフェロール濃度の観察研究をもとに、小児においては、12歳以上は性・年齢別の摂取量の中央値、11歳以下は男女の平均値が目安量とされています。

ビタミンE(mg/日)
※α-トコフェロールについて算定。α-トコフェロール以外のビタミンEは含みません。
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より

カルシウム

小児期、特に思春期(12~14歳)は、カルシウムの蓄積量と吸収率が急激に増加します。
女子は11~14歳頃、男子は13~16歳頃に骨量が最も蓄積されるので、思春期からのカルシウム蓄積量は重要です。

カルシウム(mg/日)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より
※1歳以上の目安量と18歳以下の耐容上限量は設定されていないためここでは割愛しています。

成長期は成長に伴い鉄が蓄積されます。
女子では10歳以降から月経の有無で推定平均必要量、推奨量が分けられています。
各年齢と男性、そして女性は月経の有無、それぞれの鉄の1日摂取量などは下の表のとおりです。

鉄(mg/日)
※「日本食品標準成分表2015(第7訂)」より