厚生労働省が示す、健康づくりのための食生活指針、学童期は「食習慣の完成期」です。
学童期の食生活での注意点
学童期は身体活動や発育・発達が目覚ましく、栄養素の必要量が多い時期です。
学童期後期は思春期に入るため、心身の発達に伴い、発育に必要なエネルギーや各種栄養素を十分に補給する必要があります。
しかし身体発育状態や生活習慣、活動量は個人差が大きいため、「日本人の食事摂取基準(2015)」を活用する際は個人に対応した栄養摂取を考慮しましょう。
小学校高学年に成長急進期を迎えるので、鉄の需要が高まります。
特に女子は鉄欠乏性貧血が増加するため鉄の摂取が不足しないようにすることが大切です。
栄養の偏りで懸念される疾患類
学童期の時点で、以下のような疾患の人口が増えつつあります。
原因の多くは、食事やおやつなどで栄養が偏っていることがあげられます。
- 脂質異常症
- 小児メタボリックシンドローム
- 鉄欠乏性貧血(女子に多い)
- 糸球体腎炎
食習慣の完成期
冒頭で述べたように、学童期は「食習慣の完成期」です。
学童期から発症が多くなっている疾患を防ぐためにも以下の食生活指針を注意してあげましょう。
- 1日3食規則的、バランスのとれた良い食事
- 飲もう、食べよう、牛乳・乳製品
- 十分に食べる習慣、野菜と果物
- 食べ過ぎや偏食なしの習慣を
- おやつには、いろんな食品や量に気配りを
- 加工食品、インスタント食品の正しい使用
- 楽しもう、一家団らんおいしい食事
- 考えよう、学校給食のねらいと内容
- つけさせよう、外に出て体を動かす習慣を
※厚生省、健康づくりのための食生活指針より
また、学校を拠点とした学童期の食育では文部科学省「食に関する指導の手引」(第一次改訂版2010)によると「食に関する指導(食育)の目標」と題して次の6点が掲げられています。
- 食事の重要性:食事の重要性、食事の喜び、楽しさを理解する。
- 心身の健康:心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事のとり方を理解し、自ら管理していく能力を身につける。
- 食品を選択する能力:正しい知識・情報に基づいて、食物の品質及び安全性等について自ら判断できる能力を身に付ける。
- 感謝の心:食事を大切にし、食物の生産等にかかわる人々への感謝する心をもつ。
- 社会性:食事のマナーや食事を通じた人間関係形成能力を身に付ける。
- 食文化:各地域の産物、食文化や食にかかわる歴史等を理解し、尊重する心をもつ。
食の自己管理ができる子どもに導こう!
学童期は、情動的に安定し、外部の世界への関心や好奇心を高める時期です。
しかし、小学校高学年は思春期前段階に入るため、親への反発、自立心の芽生えなどで生活習慣、食習慣が崩れやすい時期でもあります。
幼児期から培われた生活習慣や食習慣の基礎は、完成期を迎えるので、この時期の食育は重要なのです。
学校における食育の取り組みは学童個人が食の自己管理能力を形成し、望ましい食習慣を獲得し、生涯、健康で豊かな生活を営むことができるよう、子どもの発達段階を考慮して、各家庭や地域と連携して取り込むことが大切です。
子どもが楽しいと感じる食事環境とは?
近年の厚生労働省や文部科学省の前述の取り組み事項を見ると、食事の大切さはもちろん、食事の楽しさ、一家団らんが強調されています。
背景には、昔ながらの厳格な家庭環境の改善もあるかもしれません。
しかし近年は、母親の就業などで、手づくりのものを食べる機会が減り、家族一緒に食卓を囲む機会も減少傾向で、別の問題が浮上してきています。
自治体などが行っている食育アンケートでは、子どもが「食事が楽しい」と感じるのは、以下の3点です。
- 「家族みんなで話しながら食べるとき」
「友達とおしゃべりしながら食べるとき」 - 「好きな料理が出たとき」
- 「自分で調理したものを食べるとき」
1.に関しては、国が学童期の食育に望ましいと推奨しているように、家族団らんが大切だということです。
友達との食事は学童期の社会性の発達の観点からも、そして子ども自身が楽しいと感じているので、学校給食などが良い機会になっているでしょう。
しつけのために親や教師が口うるさく注意しすぎるのは、子どもの精神面で緊張を与えることにつながります。
食事のマナーに適した範囲内での、話しながらの食事は子どもの情緒面を豊かにしていくでしょう。
2.に関しては、大人でも食事で好きな物が出てくると楽しさを感じるように、子どもにとっても大切なことです。
栄養の偏りや好き嫌いをなくすことも学童期の食習慣の確立では重要ですが、栄養面ばかりに大人がとらわれてしまい、子どもの気持ちをくまない食事内容が続いてしまうと、例え栄養管理が完璧であったとしても、子どもにストレスを与えてしまうことになります。
適宜、好きな物もストレスなく食べられるよう、食事の組み合わせ例を学習させることも、望ましい食事のあり方だといえます。
3.に関しては、子どもの精神発達や社会性を発達させるためにも、家での食事の手伝いや、学校での調理実習を交えて、子ども自身の料理の機会を増やすのが望ましいでしょう。
食事を食べるだけでなく、作る楽しさは子どもの情緒を豊かにし、食材を作る生産者への感謝の心を持つことにもつながります。
また「自分が選んだ食材を調理して食べる」という行為は自信にもつながっていきます。