生まれたばかりの新生児は、母乳や育児ミルクが唯一の栄養源ですね。
しかしママたちは、はじめて抱く我が子とのふれあいに戸惑うことも多いのです。
授乳することは、母子の健康を維持するだけではなく、健やかな親子関係を築くきっかけになり、ママが育児に自信をつけることにもつながります。
そのため、初めての育児や授乳にとまどうママたちを支援していくことがとても大切なのです。

授乳・離乳の支援ガイド

厚生労働省は2007年3月に「授乳・離乳の支援ガイド」を発表しました。
現代の食生活や育児環境に合わせた、悩めるママたちの指針となるものです。

特に母乳育児については、大多数の母親たちが母乳で育てたいと思っているにも関わらず、与え方や量で悩みがちであるのが現実です。
「母乳で授乳したい」と思っているママが多いのに、ノウハウや悩んだときの情報が、ママたちに伝わっていないという状況を解決するために、「育児」全体を、産科・小児科・保健センターなど、社会全体で支援する、というのが「授乳・離乳の支援ガイド」の根底にある考え方です。

「食」は人間の基本

すべての動物の命の源は、「食べる」ことにあります。
当たり前のようですが、この基本を忘れないことが大切です。
新生児は母乳や育児用ミルクに始まり、離乳食を経て成人と同じ食事内容へと移っていきます。
他の動物とは違い、乳幼児期は大人たちが与えないと食事をとれません。
そのため乳児期に何が必要なのか、大人が知っておく必要があるのです。

「食べる」ことで大切な理由は、

  1. 偏りなく栄養をとる
  2. 栄養をとることで順調に身長や体重が成長している
  3. バランスよく栄養をとるために、好き嫌いなくいろいろなものを食べられる
  4. いろいろなものを好きになるように食事が楽しいことと感じられる

などがあげられます。
大人にも共通しますが、食事は生活の中の習慣であるため、乳幼児期から習慣づけることが大切なのです。

母乳育児のポイント

母乳育児を、無理なくママたちが実践できるポイントとして、以下の5つの内容があげられます。

  1. 妊娠中
    産科医や保健師に、妊娠中から妊婦やその家族に、母乳で育てる意義や方法を教
    えるよう促されています。
    初めての授乳は誰でもわからないものです。
    妊娠中の母親学級や両親学級、そして出産入院時に、プロの立場からノウハウをきちんと伝えていくべきだと考えられています。
  2. 出産後から退院まで
    出産後はできるだけ母子がふれあい、母乳を飲めるようにすることがすすめられ
    ています。
  3. できればママと赤ちゃんが終日一緒にいられるよう、母子同室が理想的です。
  4. 赤ちゃんが欲しがるとき、ママが飲ませたいときに、いつでも母乳を飲ませられる環境であること。
    母乳に関しては「欲しがるときはいつでも与えて良い」ということです。
    育児用ミルクとは異なり、母乳の場合、母親の乳首を吸っているからといって必ずしも「飲んでいる」とは限りません。
    そのため飲み過ぎる心配はないと考えられています。
    この時期はママと赤ちゃんのコミュニケーションとして、いつでもそばにいてふれあうことが大切なのです。
  5. 退院後
    母乳の授乳でママが悩んだときは、産科や小児科、保健センターなど、社会全体で支援することです。
    母乳が出なかったり、量に不安を感じたときに、ママの相談を「専門家たちがきちんと受けてくれる」とわかっていればママたちは安心してすごせるでしょう。
    「誰に相談したらいいのか」悩んだときには、健診や出産でお世話になった病院や、自治体をたずねるのが賢明です。

育児用ミルクでの授乳ポイント

育児用ミルクでも栄養は足りますが、母乳の授乳と同じようなスキンシップが得られるよう、赤ちゃんをしっかりと抱き、優しく声かけをしながら授乳を行うことが大切です。

離乳食の必要性

母乳や育児用ミルクは、乳児期にとっては完全栄養食で、それだけでカラダは大きくなり成長できます。
しかし成長に伴い、必要となる栄養分が増えたり、変わってくるため、母乳や育児用ミルクだけでは栄養不足になってきます。
そのため他の食べ物から栄養をとる必要性が出てくるのです。

人間の赤ちゃんは、とても未熟な状態で生まれてきます。
歯が生えていないため、食べ物をかみ切ることもできず、固形物を飲み込む機能もまだ備わっていません。
また消化器官や免疫力も未発達なので、大人と同じ食べ物をきちんと消化できず、まだカラダに受け付ける力がないため、大人の食事とは違う状態のものからスタートしなければいけません。

時代の変化

授乳や離乳にはさまざまなママたちの意見が聞かれますが、それは子どもが生まれた瞬間から一人ひとりが違うため、個人に合わせた進め方も大切です。

そして食生活は時代とともに変化しています。
食は文化や時代を反映するもので、大人が食べているものも、例えば戦後と現代では変わってきていますね。

また粉ミルクやベビーフードも昔に比べれば相当進化しています。
流れゆく時代の中でママたちは、その時代に合った育児をしてきました。

しかし参考にすべき点はたくさんありますが、今の時代に合った方法とは違った意見が多いのも現実です。

そこで2007年に発表された「授乳・離乳の支援ガイド」では、1995年に策定された「改訂・離乳の基本」からの12年の間に、食や育児を取り巻く環境が変化したことにより、現代の事情に合わせて、新しく策定されました。

悩んだ時は…

「我が子に合った進め方ができているかどうかわからない」場合は、母子手帳に書かれている成長曲線のグラフに体重や身長を記録し、成長曲線のカーブに沿っているかどうかで判断することができます(下図参照)。

それでも不安な場合は、定期健診の際に医師に相談したり、栄養士の相談会などを利用するのもいいでしょう。
こうした相談をしたときに、産婦人科や小児科、自治体の保健センターなどでは、「授乳・離乳の支援ガイド」を基にアドバイスが行われています。

出展:平成 22 年乳幼児身体発育調査報告書(概要) 資料1 – 厚生労働省