腹痛には、痛みの種類として、疝痛(せんつう)、発散痛と呼ばれるものがあります。
場所としては、腹部全体の疼痛(とうつう)、みぞおちを中心とする疼痛、右季助部の疼痛、左季助部の疼痛、右下腹部の疼痛、左下腹部の疼痛、下腹部全体の疼痛に分けられます。
また痛みの程度は軽いものから激しいものまで様々です。
腹痛の特徴
腹痛に伴う注意すべき症状には、発熱、嘔吐、吐血、下血、血尿、黄疸、下痢などがあります。
またショック症状を示す疾患も含まれるので、痛みが強い場合は、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
緊急手術が必要となるときがあります。
子どもは他部位の痛みを腹痛として訴えることがあるので、確認が必要です。
また、乳幼児では顔色が悪くなり、脱力して激しく泣き出す場合は、緊急を要する腹痛の場合があるので、注意が必要です。
原因
- 痛みが一定の時間をおいて発作性で、さしこむような激しい痛みを繰り返すことを疝痛(せんつう)といいます。冷や汗をかいて、転げまわるほどの激痛がある。胆石症、尿路結石症などの中空性臓器の痙攣性収縮によって起こります。
- 発散痛(痛みが他の部位にひびくほど痛い場合)
胆石、胆のう炎などでは、右上腹部の痛みが右肩、右背部に広がります。
また膵炎では、左肩、左背部に、尿路結石では、下肢のほうに広がります。 - 腹部全体の疼痛
突然、激しい痛みではじまる腹痛の場合、ショック状態を示すことが多くなります。
いわゆる急性腹症で、緊急手術となるケースが多いです。
放置すると発熱、嘔吐を伴い、急性腹膜炎を起こし、生命の危険があります。
胃腸管の傷み、腸閉塞、急性膵炎、肝・膵・腎臓の破裂などが考えられます。 - みぞおちを中心とする疼痛
急性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性膵炎などのほか、胆石症、胆のう炎、腸閉塞、中垂炎の初期、狭心症、心筋梗塞の発作も、発散してみぞおちの痛みとして感じる場合があります。 - 右季助部の疼痛
胆石症、胆のう炎、腎盂腎炎、腎結石などは右肋骨のすぐ下に、疝痛発作を起こします。 - 左季助部の疼痛
急性膵炎、左腎結石、左腎盂腎炎などは左肋骨のすぐ下に疝痛を感じます。また、左肩に痛みが広がる場合もあります。 - 右下腹部の疼痛
急性虫垂炎、右尿路結石、移動盲腸、腸炎、子宮外妊娠破裂、右卵巣のう腫茎捻転などで、痛みの激しいことが多くなります。 - 左下腹部の疼痛
左尿路結石、腸捻転、急性および慢性の大腸炎、赤痢、子宮外妊娠破裂、左卵巣のう腫茎捻転などで、痛みの激しいことが多くなります。 - 下腹部全体の疼痛
腸炎、膀胱炎、膀胱結石、子宮内膜症、ヘルニアのかんとん等で起こります。
看護
原因を確かめて、単純な軽微症状であれば、安静にし、腹部を温めて側臥位で休ませます。
しかし、虫垂炎では温めると進行が早まってしまうので、原因を確かめずに、安易に温めないよう、注意が必要です。
腸重積症などは一刻を争う重篤な疾患で、速やかに医師の処置が必要です。
便秘による腹痛であれば、浣腸などですぐによくなりますが、疾患によっては浣腸で悪化することもあるので、腹痛の原因が特定するまでは、むやみに行わないようにしましょう。