近年、子どもが大人からの暴力により、命を奪われるニュースが増加しており、深刻化しています。
児童虐待の現状を知り、解決策を知っておきましょう。
児童虐待の現状
「子どものしつけ」と称して、暴力をふるったり、何週間も食事を満足に与えない、子どもを車中や家の中に放置して、買い物やパチンコなどに行ってしまうケースが多くなっています。
こうした本来、子どもを保護、養育するべき立場である大人が、子どもの成長を阻害してしまうような暴力を加えることを「児童虐待」といいます。
厚生労働省の統計によると、平成28年度中に、全国の児童相談所で対応された児童虐待対応件数は、過去最多の122,578件で、統計を取り始めた平成2年度の件数の約110倍となり、深刻化しています。
児童虐待の増加に伴い、平成12年に『児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)』が施行され、「児童虐待については児童相談所に相談する」という意識が世間に定着してきました。
しかし少子化にも関わらず、毎年報告件数は、約2万件ずつ増加しているのが現状です。
児童虐待の種類
『児童虐待防止法」では、保護者(親権者、未成年後見人、その他の者で、児童を監護する者)が、下表に記載している内容の行為を行った場合、「児童虐待」と定義されています。
子どものための”しつけ”と思っていることでも該当する場合もあるので、行き過ぎたしつけとならないよう、注意しておきましょう。
児童虐待法により定められた児童虐待の種類(2条)
種 類 | 内 容 |
身体的虐待 | 児童の身体に外傷が生じ、あるいは生じるおそれのある暴行(親などが冬に外に締め出す行為、縄などにより一室に拘束する行為など)を加えること |
性的虐待 | 児童にわいせつな行為をすること、また児童にわいせつな行為をさせること |
ネグレクト (育児放棄・監護放棄) |
著しい減食、または長時間の放置など、保護者としての監護を著しく怠ること |
心理的虐待 | 児童に対する著しい暴言や拒絶的な対応、あるいは児童と同居する家族に対するDV(家庭内暴力)などにより、児童に著しい心理的外傷を与えるような言動を行うこと |
児童虐待は、児童の心身の成長を阻害するだけではなく、場合によっては命の危険にさらす重大な行為です。
できるだけ早く発見し、対処することが望ましいです。
保護者が虐待を自覚し、悩んでいるのであれば、自ら市区町村の窓口や児童相談所の全国共通ダイヤル(0570-064-000)などに相談しましょう。
しかし、虐待を自覚していない場合は、自ら連絡をすることは期待できません。
こうした事情でも、児童虐待防止法では、学校、児童福祉施設、病院などの関連機関に対して、児童虐待の早期発見につながるよう、義務付けれています。(5条)
親族や友人、近隣在住者などが、児童虐待を受けていると思われた児童を発見した場合にも、直接、また地域の児童委員などを介して、市区町村、都道府県が設置する福祉事務所、そして児童相談所に通報しなければいけません。
児童虐待防止対策を強化
児童虐待防止法の施行後も、児童虐待防止対策を強化するため、制度の見直しが行われています。
虐待の通報を受けた場合、児童相談所などが行う安全確認が義務化され、保護者に対して出頭を要求する制度も導入されました。
また、児童福祉司の充実や施設を退所して就職を余儀なくされる児童に対して、施設長による身元保証制度が創設される、といった対策も行われています。
児童虐待を防止するために、幅広く情報を収集し、関連機関が児童の安全を最優先に考え、行動することが必要です。
親権の停止
増え続ける児童虐待を受け、児童虐待から子どもを守るための民法・児童福祉法の改正も平成23年5月に行われました。
改正の内容は、父親や母親による親権の行使が難しい場合、または不適当と判断され、子どもの利益が害されるときは、その父親または母親について、最長2年間の範囲で親権停止の審判が下される、というものです。
そして子どもの緊急時に児童相談所長や児童養護施設の施設長などの権限を親の意向よりも、優先させることもできます。
今までは、親には子どもを監護、教育する権利があるので、児童虐待が疑われるケースでも、子どもと親を引き離すのは、難しいと考えられてきました。
また、親の親権を喪失させる制度も以前からありましたが、喪失すると、今度は元に戻すのが難しいという問題もあり、適応がなかなかできないという実態がありました。
しかし法律の改正により、一時的な親権の停止が認められたので、今後は、虐待を受けている子どもを親から引き離して保護しやすくなっていくと考えられています。