健康保険では、出産のために会社(仕事)を休んだ場合、賃金の補てんと出産費用の補助を行っています。
出産費用の補助としての給付を「出産育児一時金」、賃金の補てんとしての給付は「出産手当金」といいます。
要件を満たせば、両方とも受給できるでしょう。

出産育児一時金について

被保険者または、その被扶養者である家族が、妊娠4ヶ月以後(妊娠85日以上)に出産した場合、一児について42万円が支給されます。(双子以上の場合は42万円×人数分)
しかし、出産した医療機関などが産科医療保障制度に加入していない場合、一児につき39万円の支給になります。

産科医療保障制度とは、出産の時に、重度の脳性まひが発生した場合、医療機関に過失がなかったとしても、その出生時に対して補償(総額3,000万円)を行う、という制度になります。
補償を受けるためには、出産を行っている医療機関側が1つの分娩について3万円の保険料を負担する必要があるので、その分、出産育児一時金に上乗せされています。

出産育児一時金は、妊娠85日以降であれば、出産に限らず、死産や流産でも支給されます。
また、被保険者資格を喪失する日の前日まで継続して、1年以上、被保険者期間のある人が、資格喪失後、6ヶ月以内に出産した場合でも、支給されることになっています。
ただし、資格喪失後に夫の被扶養者となり「家族出産育児一時金」を受けられる場合は、どちらか一方の選択になります。

参加医療補償制度は、平成27年1月から「在胎週数32週以上かつ体重1,400g以上」という条件が設けられています。

出産育児一時金の請求手続き

請求する被保険者(代理人も可)が、出産から2年以内に事業所管轄の全国健康保険協会の都道府県支部、または会社の健康保険組合に「健康保険被保険者出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書」を提出することになります。

出産育児一時金の支給は、以前は、いったん医療機関などに費用を支払った後に申請するという方法がとられていました。

しかし、制度が改正され、原則として、保険者が直接、医療機関などに出産育児一時金を支払う形に変更されました。(直接支払制度)

出産手当金について

被保険者が出産のため、会社を休んで賃金を受けられない場合、出産日(出産予定日より遅れた場合は予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日後56日までの期間、欠勤1日つき、標準報酬日額の3分2が支給されます。

産前42日、産後56日の日数を数える際、出産日の当日は産前に含まれます。
出産日が出産予定日より遅れた場合は、産前42日は出産予定日の当日を含めて前42日間、実際の出産日の翌日から56日間が出産手当金の支給対象期間となります。
この間、休業し、賃金が出ない期間について支給されます。

「賃金が支払われない」とは、まったく支払われない場合でけではなく、出産手当金の額(標準報酬日額の3分の2)に満たない賃金の場合も対象となります。
その場合、出産手当金との差額が支給されます。

出産手当金の請求手続き

産前、産後別、または産前産後一括して、それぞれの期間が経過した後に、事業所管轄の全国健康協会の都道府県支部、または会社の健康保険組合に「健康保険出産手当金支給申請書」を提出します。
出産手当金を受けられる日ごとに、その翌日から計算して、2年で時効となり、請求権がなくなります。